2012年3月アーカイブ

「頑張りすぎてしまったんだね」

私の病気は、「うつ病」とそれにともなう「パニック障害」というものでした。うつ病もパニック障害も、 誰でもかかる可能性のある病気で、珍しい病気ではありません。とはいえ、とても苦しい病気です。

私がうつ状態に陥ったきっかけは、子どもの受験や両親の病気などで主婦としての負担が大きくなったことでした。どうして良いか分からないうちに、「うつ」が薬を飲まねばならないほどに悪化していきました。

うつは、億劫な感じ、人と会うことが煩わしい、いつもしている事ができなくなる、不眠、食欲低下などの 症状がありますが、 悪化すると刺激に対する抵抗力がおちてきて更に多彩な症状を起こします。 昼も夜も全くリラックスできなくなり、とても辛く、 私は、「自分は、今、助けてほしい」と心底思い、 夫に休みを取ってもらって心療内科に行ったのです。

初めてドクターに会ったとき、私は満足にしゃべることもできませんでした。 でも、ドクターは私の目を見てはっきりと 「うつは治りますよ」と言ってくれたのです。 話もよく聞いてくれて「頑張りすぎてしまったんだね」といたわりの言葉をかけてくれました。

この時、すごく安心して泣いてしまったことを覚えています。それまでは苦しくて泣いていたのですが、 ドクターの前で流した涙は、私のことを分かってもらえた嬉しさと治るんだ大丈夫なんだと思えた安堵の涙でした。

 

「今みたいにベストが無理なときは、ベターを目指すというのはどうですか?」

ドクターに診察してもらって、私に合った薬を処方してもらい、家事はヘルパーさんに任せるようにアドバイスしてもらって、楽になりました。

通院はタクシーでなければできませんでしたが、薬を飲んで寝たり起きたりの状態から、 長い時間でなければ音楽を聴いたり本を読んだり、
静かな場所なら 散歩してみたいなと思うようになったりと落ち着いてきました。
私は薬がよく効くタイプだったのか、治療をうける前の苦しさは何だったのかと思えるほどでした。
診察のたびにドクターからは「自分を大切にケアしよう」、
「ベストよりもベターーを目指すと言う風に考える事はできそうですか?
」、
「自分で全部を引き受けなくてもいい、 代理をしてもらえることは他の人に頼めるようになるといいね」
などと言ってもらえて、自分のことや物事を客観的にみる方法を教わった気がします。

 
「本当に改善感が感じられたんだね」

治療から1ヶ月たった頃、やっと自分の内面と対話できるようになってきた感覚を、私は一生忘れないでしょう。

不思議なイメージなのですが、自分が、遠くで手を振って微笑みながらこう言っているのです。


「良くなったよ、ケアを受けてくれてありがとうね」。私は嬉しくて泣きました。


ドクターとのカウンセリングの時、この体験を話したら 「そう、本当に改善感が感じられたんだね」と ドクターは言ってくれました。信じてもらえるか不安だったのですが、ドクターはちゃんと聴いてくれており、私はとても嬉しかったです。


 

 

ただいま、編集中ですsweat01    HP担当 S

うつ病について

1.うつ病は治る病気です

専門医の治療を受け、適切な薬を飲んで必要な休息を取れば、うつ病は治ります。
回復するプロセスは人それぞれですが、早い段階で専門医に相談することで ご本人の回復はより順調になるでしょう。

2.現在、日本では人口の6.5%がうつ病であるという報告があります

生涯のうちにうつ病にかかる可能性については15%程度という報告が多く、 近年では身近な病気として捉えられています。

3.うつ病は「病気」であり「抑うつは主な症状」です

うつ病の代表的な症状

抑うつ気分

気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどがある。
一時的ではなく、きっかけや状況が改善してもこのような気分が続いている。

興味・喜びが感じられない

以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。

意欲・気力の低下

「仕事に行きたくない」「仕事がつらい」「通勤がつらい」「家事をする気が起きない」など日常的なことを苦痛に感じる。 何をするにも億劫な感じがする。疲労感が強い。性欲が減退した。人と会うことが煩わしい。

集中力・思考力・決断力の低下

仕事や家事に集中できない、要領が悪くなる、イージーミスが増える、決断できないなど今までできていたことが出来なくなる。

自分には価値がないと感じ、自殺を考えたりする

何をしても面白くなく、物事にとりかかる気力がなくなり、何もしていないのに疲れてしまう。
考えがまとまらず小さな物事さえも決断できない自分には存在している価値などないと感じる。消えてしまいたい、死にたいと思う。

睡眠と食欲の不調

なかなか寝付けない、夜中や明け方に覚醒してしまいその後眠れない、熟睡感がない、逆に日中の眠気がひどい、眠りすぎる。
食欲減退、食べ物の味がしない、逆にイライラして食べ過ぎてしまう。

4.うつ病の初期段階では辛いのを我慢して元気そうに振る舞っていることもあります

日常生活でみられる特徴

  • 朝に抑うつ感が強く、夕方になると多少改善する。
  • 親しい人との対人関係でも気疲れする。
  • 気晴らしがむしろ苦痛に感じられる。
  • 新聞や本などを読み通すことができなくなる。

その他、周囲の人たちからみても確認できる特徴

  • 動作が遅くなった。逆に落ち着きなく身体を動かしている。
  • 口数が減った。逆に不安や焦りをまぎらわせようとしきりに喋る。
  • イライラしたり怒りやすくなった。
  • 無理してニコニコしているように見える。

5.身体に出やすい症状

怠さ、疲れやすさ、不眠と食欲不振による急激な痩せ、太った、目の疲れ、頭痛、頭が重い感じ、肩こり・腰痛、 口が乾く、立ちくらみ、吐き気、ひや汗、女性では生理不順、月経前症状がひどくなる、など。

6.ご家族、職場の皆さまへ

  • うつ病に対する誤解の最たるものは、怠けている・根性がない・気の持ちようだという考えでしょう。
  • うつ病でありながらそれが「病気」であることに気づかずに症状に苦しんでいる人が 全体の75%にも上ると言われています。
  • また、受診につながっている25%の患者様のなかにも、自覚がありながら同僚や上司に 言えないまま無理をして働き続け、軽度のうつを悪化させてしまったというケースも少なくありません。
  • 個人だけでなくご家庭や、ご勤務先・職場においても、うつ病への理解が深まれば、予防への工夫ができたり、初期段階で治療をうけやすくなるでしょう。
  • こじらせてしまう前に、どうぞ、うつ病の専門家にご相談下さい。

パニック障害について

1.パニック障害は適切な治療で治る病気です

パニック障害は心理的原因ではなく、脳の神経伝達物質のトラブルが原因で生じる病気です。
ですが、まだ病気としての認知度は低く、多くの人が自分に起きている症状がパニック障害だとは解らずに悩んでいたり、 身体が病気なのではないかと適切な治療を受けずにいるなど、発見が遅れて症状が悪化してしまうケースが多く見られます。
実際はパニック障害は薬物療法が効果的で、軽症の場合は薬をのむだけで治ることも珍しくありません。

2.パニック障害の症状「パニック発作」と「予期不安」

突然、場所を選ばず以下の症状が同時に起こります。

  • 激しい動悸、胸の痛み、発汗、身体の震え
  • 窒息しそうな感じ、めまい、吐き気
  • 現実でない感じ、自分が自分でなく感じる
  • 気が変になるのではないかという恐怖
  • 死ぬかも知れないという恐怖
  • 身体全体の皮膚が冷たいまたは熱いと感じる

これをパニック発作と呼びます。
これらの発作は10分以内にピークに達し、30分~1時間以内に治まります。
ですが、この発作が起きたらどうしようという恐怖から、さらに不安を感じることがあります。
これを予期不安(*)と呼びます。パニック障害の特徴でもあります。

予期不安
パニック障害の典型的な症状。
発作のことが頭から離れず「またあの発作が起こるのではないか!?」と強い不安に苦しめられる。

3.パニック発作のあと、悪化していく典型的なパターン

不安の対象が広がり、不安に支配された生活となり、広場恐怖(*)(公衆の場が怖いと言う意味)と回避行動(*)のため、 仕事や日常生活に支障を来すほどになります。
「うつ状態」が現れてくることが多く、放置しておくとさらに症状が複雑、深刻になります。

広場恐怖(公衆の場が怖いと言う意味)
すぐに逃げ出せない状況、人前で恥ずかしい思いをする場所、助けを求められないあるいは他人に迷惑をかけてしまいそうな 状況(バス・急行電車・高速道路、歯科医院、理髪店の中など)に、自分がいることに強い不安を感じる。
回避行動
広場恐怖の対象となる場所や状況をできる限り避けようとすること。
買い物に行けない、出張に行けない、仕事を欠勤する、重要な手続きを放置する、など必要な場合にも外出できない。

4.パニック障害の治療

(1) 薬で発作を鎮めていきます

治療に用いられる代表的な薬である抗うつ剤や抗不安剤には、"パニック発作の予防"、"発作のあとに現れる不安感(予期不安)の解消"の効果があります。 個人差がありますが、抗不安剤は即効性があるので発作時の症状はかなり緩和されます。服用開始から8週間くらいで予期不安が解消、3~6ヶ月の服用で全ての症状が治まってきます。
ですがもし、症状が完全に解消されたと感じても、予防のためしばらくの間は服用が必要です。

(2) 焦りは禁物、治ることを信じて治療を続けましょう

パニック障害の治療に焦りは禁物です。"症状の背景に他の問題があるケース"、また"症状自体が複雑化しているケース"は治るまでに時間はかかりますが、 パニック障害はしっかりと治療を続けていけば必ず改善できます。
薬で症状を安定させながら、不安に対処する方法を練習し、発作の引き金となるストレスに対しても自分なりに対処できる スキルを身に着けていきましょう。

5.家族やパートナーなど身近な方々へ

近くで患者様を支えている方ほど、症状が長引くことにより、本人に対して焦れったく思ったり、治療に対して不信感を抱くことがあるかも知れません。 回復に必要なのは、順を踏まえた治療と休養はもちろん、身近な方々の理解と患者様の病状に適したサポート(生活リズムを整えることへの協力、 外出トレーニングの付きそいetc)です。
パニック障害のこと、本人への接し方でアドバイスが必要なときも、ぜひ専門家に相談してください。

6.職場の方々へ

パニック障害は働き盛りの男女に多いという統計があり、過労・ストレスがパニック発作の引き金になるということをご存じでしょうか。 職場におけるメンタルケアとして、パニック障害について、復職プログラム・本人への具体的なサポートについて正しく理解しておくことを勧めます。

適応障害について

適応障害

適応障害は、進学、就職、結婚など新しい環境にうまく適応できずに、うつ状態や不安状態、 攻撃的な行動などの症状が現れて社会生活に支障をきたすことをいいます。

特定のストレスが原因となっている心の病のひとつで、ストレスが始まってから3ヶ月以内に症状が出現します。

例えば

  • 異動や昇進により、新しい職場環境や仕事になじめない
  • 上司や同僚との人間関係がうまくいかない
  • 夫(妻)の両親とうまくつきあえない
  • いじめ
  • 失恋

など・・・

適応障害は、適応能力の低さが原因ではありません。また、「怠け」や「わがまま」でもありません。

社会環境のストレスと生まれながらの性格や素質とのバランスによって、落ち込んだりいらいらしたりと いったいろいろなストレス反応が出ることがありますが、これらは社会環境やその変化などに適応するための 必要な反応です。

けれども、ストレスが過剰で長く続いたり、ストレスに対して過敏であったりすると、 バランスが崩れてさまざまな症状が現れます。

適応障害の症状

  • 情緒的な症状
    不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱など
  • 身体症状
    不眠、食欲不振、動悸、全身倦怠感、易疲労感、頭痛、肩こり、腹痛など
  • 問題行動
    遅刻、欠勤、早退、過剰飲酒、ギャンブル中毒など
  • 対人関係や社会的機能が不良となり、仕事に支障をきたしたり、 引きこもり状態になったりすることがあります。

適応障害とうつ病

適応障害の症状はうつ病の症状と似ているところがありますが、適応障害の人はストレスがないところでは 元気でいられることもあるという点でうつ病とは異なります。

うつ病は特定のストレスが原因となっている場合と、特に原因が見当たらない場合があります。

適応障害を治療せずに放っておくと、「特定のストレスが原因で発症した"うつ病"」へ移行することがあるのです。

適応障害の治療

適応障害は適切な治療を行えば必ず治ります。

  1. 環境調整
    まず、原因となっているストレスを軽減しましょう。環境を適応しやすい状態に整えることや、 場合によっては休職や休学をして休養することで心のエネルギーを回復することが必要です。
  2. 薬物療法
    不安には抗不安薬、うつ症状には抗うつ薬の服薬など、それぞれの病状に応じた 薬物療法が必要な場合もあります。
  3. 心的葛藤に対してカウンセリングを受けることで混乱した心の整理をしたり、 心理的な援助により社会に適応できるようにすることも大切です。

適応障害になりやすい人

  • 何でも徹底的にやりたい人
  • 仕事が好きな人
  • 責任感が強い人
  • 几帳面な人
  • 頼まれると断れない人
  • 気が小さい人
  • 評価を気にする人
  • 朗らかで明るい人
  • 傷つきやすく、それを引きずる人

生活上の注意・予防

  • 適度の休養や気分転換を心がけ、ストレスをためないような生活の工夫をすること。
  • 一人でくよくよ考えずに、家族や友人などに相談すること。
  • 自分のペースを知り、その上で周りのペースに適度に合わせられるようになること。
  • 人といかにつきあい、自己実現するかというソーシャルスキルを身につけること。

社交不安障害について

社交不安障害

人前で何かをするという状況」で、必要以上の不安や緊張・恐怖を感じてしまいます。

  • 人と会う前に何日も何週間も悩む。
  • 人の目が気になる。視線に恐怖を感じる。
  • 電話の応対や人前で字を書くことが苦痛
  • 声の震え、赤面、お腹が鳴る、ひどい汗、動悸、息苦しさ。

社交不安障害は治療可能な病気です。

社交不安の症状は、脳の神経伝達物質のトラブルが原因で生じます。
症状改善に、薬を用いた治療が高い効果をあげていることも実証されています。
薬で症状を緩和し、適切な考え方や不安や緊張をコントロールする方法を身に付けることで治療は可能です。

社交不安障害は早期治療が有効な病気だと認められています。

発症年齢は比較的早く10代の頃から症状が現れています。
しかし、悩んでいながら「こんなことで...」と受診をためらっているうちに、人前での嫌な体験が重なり追いつめられ症状をこじらせてから受診する患者さんが多いと言うのが現状です。

同じ悩みを抱えている人は大勢います。社交不安障害の症状のために、日常生活・職場・学校などで支障を来している、あるいは常に苦痛を感じている場合は早めに専門医に相談してみましょう。

社交不安障害の症状を我慢し続けると陥りがちなパターンとは?

  • 苦手な状況を避ける回避行動(欠席など)が多くなる。
  • 能力はあるが発揮するチャンスを回避するため正当な評価を得られない。世間から孤立してしまう。
  • うつ病、パニック障害、過呼吸症候群など他の病気の併発率が高くなる。
  • 気を紛らわせるようとしてアルコールなどへの依存が始まる。
  • 特定の状況・場面だけが苦手だったのに、社会的場面全般を恐れるようになる。

【家族・職場・学校など周囲の方々へ】

「人前であがるくらいで治療の必要があるのか?」 と思われるかも知れませんが、過度の不安や恐怖という社交不安障害の症状は、苦しさのレベルが深刻であり気の特ちようで克服できるものではありません。

必要なのは専門医の治療やカウンセリングであり、叱咤激励はかえって本人を追いつめてしまいます。本人との接し方についてアドバイスを求める場合は、精神科医、心療内科医、カウンセラー、セラピストら専門家に相談してみましょう

摂食障害について

1.摂食障害は治る病気です

摂食障害は「治りにくい病気」と思われがちですが、適切な治療により治る病気です。
摂食障害への誤った常識「原因は母子関係にある?」「わがまま病?」

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  • 人の成長は母子関係のみで決まりません
  • 父親、両親の夫婦関係、他者との関係、
    生活環境も影響しています
     ↓
  • やせている女性が美しいとされ、ダイエットを煽っている、社会的風潮
  • 病気に移行していく要因は「やせたい」という気持ちの後ろにある、様々なストレス自信を持てない気持ち
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  • むしろ周囲に配慮しすぎて自分の言いたいことを言えない方が多いです
  • 必要以上に自分を責めてしまうのが特徴です
  • わがままに見える言動は、病気としての症状なのです
  • 病気の症状は、自分の意志でコントロールできません

2-(3)「摂食障害に伴いやすいその他の症状」で、詳細をご覧ください

*ダイエットと摂食障害の違い:きっかけがダイエットでも、健康を損ね、日常生活に支障が出始めてもなお「やせること」にしがみついてしまう、と病気の領域に入ります

2.摂食障害とは

摂食障害は主に10代後半から20代前半の女性に多く、標準体重(=身長m×身長m×22というBMIを用いた算出方法が一般的)の80%の有無で「拒食症」と「過食症」に分けられる。

(1) 拒食症と症状

客観的にどんなに痩せていても、本人は体重・体型に強くこだわり、自分の意志では振り払えない「太ることに恐怖を覚える病気」
「過食を伴わない拒食症」:ほとんど食べずに痩せていくタイプ。
「過食を伴う拒食症」:過食嘔吐や下剤乱用などを伴うタイプ。

(2) 過食症と症状

過食症は、「食べたい病気」と考えられがち、でも、実は「太ることが怖い病気」
やせることで自分に自信が持てるのではないかと考え、過度にやせようとして反動で過食が起こる。その過食はもはや自分ではコントロールできないほどの強い衝動。
「排出行動を伴う過食症」:過食の後に嘔吐や下剤乱用等を伴うタイプ。
「排出行動を伴わない過食症」:過食のみで嘔吐など排出行為を伴わないタイプ。

(3) 摂食障害に伴いやすいその他の症状

以下に挙げることは摂食障害の方に伴いやすい症状です。一見症状とは思えないようなものもありますが、いずれも患者さんがコントロールできるものではなく、多大な苦しみを感じておられることから、これらは症状としてとらえます(必ずしも全員に伴うものではありません)

1. 気分の落ち込み、引きこもり
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2. 薬物・アルコール類の過剰摂取

→ 日常生活に大きく支障が出てしまう。

  • 下剤の乱用
  • 睡眠薬、アルコールの過剰摂取(うつ気分を軽減するため)
3. 強迫的なルール
  • ~時以降は絶対に食べない
  • 野菜しか食べない
  • 生活パターンについての強迫的なルールを作り、守れないとパニックになる。
  • また、家族などに自分より必ず多い量、もしくはカロリーを食べてもらうなど、家族に強いることもある。
4. 金銭面へのこだわり、不安
  • 過食のための費用が莫大になり、経済的な不安を抱える。
  • 過剰なアルバイトや借金や万引きを繰り返すこともある。

3.対人関係療法(IPT)を用いた摂食障害の治療

当クリニックでは、「対人関係療法」という精神療法を用いて摂食障害の治療に当たっています。「過食症」に対して効果があると科学的に検証されているのは、今のところ「認知行動療法」と「対人関係療法」だけです。院長坂本も「2011国際IPT学会」で発表しました
また「拒食の要素の治療」に対人関係療法を組み合わせてもかなりの効果をあげることができています。では摂食障害が治るとはどういうことか、また対人関係療法で目指すことはなんなのでしょうか?

(1) 症状を継続させている要因を探る

摂食障害の方にきっかけを伺うと、「ダイエット」であることが多いのですが、単なるダイエットで終わらず摂食障害へと発展し、症状が継続するのは、患者さんの自尊心の低さや多大なストレスによるものであると考えられます。ですから、対人関係療法ではきっかけよりも症状を現在も継続させている要因について探っていき、それに対処する方法を考えていきます。
※体重記録など患者さんの苦痛になることはしません。

(2) 症状と対人関係

対人関係によるストレスとは

「対人関係」と言うと「私は問題ない」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。
摂食障害の患者さんの多くは、自己主張が苦手で、周囲と軋轢を起こすくらいなら自分が引き受けてしまおう、と波風を立てないように気を使ってこられた方がとても多いからです。しかし対人関係の問題とは、衝突を繰り返すケースばかりではありません。
自分の意思をうまく伝えられず、我慢して知らず知らずストレスをためてしまう、ということはありませんか?

病気による対人関係の変化

患者さんは病気になったことで症状に苦しみ、引きこもりがちになったり、更に自信を無くしたり負い目を感じて、周囲の方とうまく関われなくなってくることが多く見られます。するとご家族や周囲の方もどう接してよいのかわからなくなったり、心配のあまり過度に励ましすぎたり、一緒に落ち込んでしまったりして患者さんとの関係がこじれてしまい、結果的に患者さんのストレスが大きくなってしまうことも考えられます。
ご家族や周囲の方が病気を理解し、患者さんにとって暖かいサポーターとなって信頼関係を築いていくことが、患者さんの治療効果を大きく上げることにつながります。

(3) 症状を無理に押さえ込まない、とらわれない

症状は患者さんなりの自分を守る術

これまで摂食障害の治療の多くは、患者さんの「やせたい気持ち」は悪いこと、「拒食」「過食嘔吐」などの症状を抑えるべきものとされていました。しかし、患者さんがそういった症状を出すことで、現在のつらい状況のバランスをやっととっているのだと考えると、症状自体を押し込んでも苦しさは増すだけ、むしろ押さえ込まれたストレスで更に悪化を招くでしょう。

症状が起こるメカニズムに目を向ける

対人関係療法では、症状そのものには焦点を当てず、症状が出た時に、どんなことがあったのか、どんな気持ちだったのかを具体的に知ることで、症状と出来事や気持ちを結び付けていきます。そしてより良い対処法を一緒に考えていきます。はじめはぴんと来なくても、ここに気づけるようになることで、次に同じようなことが起こる前に対処できるようになって行き、それに伴って症状も自然に治まっていきます。

(4) 対人関係療法で目指すこと

焦らない、完璧を目指さないことが大事

治療を始めたのに、症状がなかなか治まらない、またはいったん治まってきていたのにぶり返した、などで一喜一憂するのはよくありません。完璧に症状が治まらないというところにとらわれてしまうと、そのことがまた新たなストレスとなってしまうからです。

症状の改善は後からついてくる

治療で目指すべきところは、症状の改善はもちろんですが、次に同じような症状が出た場合、その背後にあるストレスや自信のなさに気づけるようになること
そして家族や配偶者など、周囲と信頼関係を築いてきなのがら協力を得て、ストレスにうまく対処していく術を身につけていくことと言えるでしょう。
この術が身についてくると、自然と少しずつ症状の改善もみられていきます。

4.ご家族のみなさんに

摂食障害の治療には、ご家族のご理解とご協力がとても重要です。

  • 治療の間は「今は症状を出すことでバランスをとっているんだ」と、ご理解くださると、訳が分からないまま「症状」に振り回されずに済む経験が増えてきます。
  • 過食費用についてひどく自己嫌悪に陥っていらっしゃいます。ご家族に言えず、無理なアルバイト、借金を繰り返すなどの問題を抱えておられることも多いです。
  • こういった経済的な側面で、ご家族から協力いただくことは、患者さんの経済面への不安軽減のみならず、理解し支えてもらっているという多大な安心につながり、その安心が症状の改善など治療効果につながります。
  • これまでうまく言葉にできなかった患者さんの気持ちに、どうかよく耳を傾けて差し上げてください。そうやってご家族と信頼関係を築くことで、摂食障害の患者さんは安心を感じ、自信を持つことができ、その結果ストレスにも適切に対処できるようになり、ひいては症状も改善されていくでしょう。

PTSD/トラウマについて

1.PTSDとは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

災害や事故、事件など非日常的なことに遭遇すると、人の心は強い衝撃を受けます。阪神淡路大震災や東日本大震災の後には、PTSDという言葉を耳にした方、あるいはご自身や身近な方がPTSDと言われたという方もいらっしゃるかもしれません。

私たちが、個人の力ではどうにもならないような圧倒されるほどの衝撃的な出来事を経験した場合、それが大きな傷(トラウマ)となり、その後様々な精神的、身体的問題を残すことがあります。PTSDは、傷を受けた後、その傷が癒えないまま後遺症として残る病気の一つです。現代の医学的な診断としてのPTSDは、命に関わるような、または重症を負うような出来事を体験したり目撃することにより起こります。

2.PTSDの症状

再体験症状(フラッシュバック)

  • トラウマの原因となった出来事が何度も想起される
  • トラウマ的な出来事に関する苦痛な夢を繰り返し見る

回避・麻痺症状

  • トラウマを思い出させるものを避ける
  • 他の人から疎遠になっている感じ
  • 感情が生き生きと感じられない
  • 未来がない感じ

覚醒亢進症状

  • 不眠
  • 怒りっぽい
  • 集中困難
  • 過度の警戒心
  • 驚き方が過剰など

3.複雑性PTSD

上記のように、医学的な診断としてのPTSDは、実際に命に関わるような、または重症を負うようなできごとによるものとされています。しかし、これ以外にも、私たちは対人関係の中で悩み、時には傷つくということもあるでしょう。多くの場合は、こころに傷を受けたとしても、周りの人に共有してもらうことや時間が経つことによって、自然と傷はいやされ、常にその傷が疼くという状態ではなくなるかもしれません。

しかし中には、反復する虐待や暴力などが一定期間繰り返し体験されることによって、心に深い傷、すなわちトラウマを残すことがあります。このような状態を「複雑性PTSD」と呼ぶこともあります。傷がいやされないまま放置されてしまうと、感情が生き生きと感じられなくなったり、少しのことで怒りっぽくなる等、PTSDと同じような症状が現れます。これらに加え、自分自身や周りの人、さらには世界に対する信頼感が損なわれてしまうという問題が起こってくるのです。

たとえば

  • 幼少期に親、あるいは祖父母からDVを受けていた
  • 両親が常にケンカしていた
  • いつも親の愚痴を聞いて育った
  • 兄弟間で扱いに差を感じた
  • 学校で度々いじめにあっていた
  • 信頼していた友人に裏切られた
  • 先生から一方的に怒られた
  • 恋人を見つけるも去ってしまった

このような心の傷が重なると、人と会うのが怖くなったり、人が信じられなくなったり、自分の感じ方が肯定できなくなることがあります。もちろん、このような体験をした方が必ずPTSDになるというわけではなく、似たような体験をしていても、病気になる人とならない人がいます。病気になるかどうかを決める要素としては様々なものがありますが、中でも身近な人の支えがあるかどうかというところは、重要な要素となっているようです。

4.PTSDの治療

PTSDは治る病気です。一般的な治療法としては、認知行動療法、対人関係療法、薬物療法等が有効とされています。

当院では、薬物療法と平行して、ご希望の方には対人関係療法をご案内しています。
私たちが、対処できないような出来事に出会ったとき、それまでのやり方や感じ方、世界に対する見方までもが揺るがされ、それらから切り離されてしまうような感覚に陥ります。そうすると、自分は何とかやっていけるだろうという、コントロール感覚を失ってしまうのです。

対人関係療法では、再び自分自身や周りの人たち、また、世界とのつながりを見いだし、コントロール感覚を取り戻していく作業をお手伝いします。
また、きちんとした治療を受けられない場合でも、安全な環境を確保しながら、周りの人に自分の体験や気持ちを話し、共感してもらうことは大きな助けになるでしょう。

もしあなたや身近な方が、過去に大きな衝撃を受けるような体験、もしくは繰り返される対人トラウマにより、今も癒されないままの心の傷に脅かされているなら、当院の医師、カウンセラー等に相談されてみてはいかがでしょうか。

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